キネステティクスとは

キネステティクス®とは

キネステティクスとは、一言で言うと人の動きについて学習する学問であり、動きや活動そのものの理解を深める事ができると同時に、それを看護や介護の場面でツール(道具)として使用することにより、人の動きの分析能力の向上や動きの資源の活用、ケアを受ける側・ケアを提供する側双方の負担を軽減する健康増進の実践的な方法としてケアの場面で広く活用することができます。

キネステティクスは、アメリカ人で行動サイバネティクス博士のフランク・ハッチ氏と、同じく行動サイバネティクス博士のレニー・マイエッタ氏によって創始され、40年以上前から行動サイバネティクスと生理学を基盤として開発・研究され、その研究成果を「動きの学習」プログラムにまとめ教育として提供されています。それがキネステティクスです。主に、ドイツ語圏のヨーロッパで臨床の場に広く応用されており、現在でも発展・発達をつづけています。

「キネステティクス」、日本人には聞き慣れない言葉ですが、「Kine~動きの」と
「aesthetics~魅力、心地よさ、喜びを与えるetc...」という2つのギリシャ語を組み合わせて「Kinaesthetics(キネステティクス®)」という新しい言葉を創始者の2人はつくりました。これがキネステティクスの語源です。

キネステティクスは、次のことに役立つと創始者フランク・ハッチ氏は自分の著書

『看護・介護のためのキネステティクス上手な「接触と動き」による介助』

(ふくろう出版・フランク・ハッチ他 翻訳:澤口裕二)の中で次のように述べています。

キネステティクスがすばらしいのは、つぎに掲げる5つの点からです。キネステティクスはつぎの点で介助者の役に立ちます。

①患者を人間として感じるために

②自分独自の観察能力を高めるために

③知覚障害者とのインタラクション能力を伸ばすために

④患者の動きを通して、介助者自身が体について自覚し現在ある能力を使うのに役立てるために

⑤自分の存在を感じ、ケガから身を守るために

※インタラクション~システム内の2つの構成要素の間の情報の交換のこと。(中略)、生態組織と  いうシステム内の体の細胞の間では電気的興奮、生物というシステム内の組織・器官の間ではホルモンや神経の伝達、社会というシステム内の人の間では言語的・非言語的コミュニケーション、(中略)介助行動というシステム内の介助者と患者の間では、「動き」「接触」、言葉がインタラクションを作ります。

『看護・介護のためのキネステティクス上手な「接触と動き」による介助』 より抜粋 

キネステティクスは、相手の活動や動きを6つの視点(概念)からとらえ、分析します。その6つの視点(概念)が①インタラクション ②機能からみた解剖 ③人の動き ④力 ⑤人の機能 ⑥環境 です。

これらの視点(概念)をツールとして使用し、活動や動きを分析することで相手が持っている動きの資源を発見し、人間としての自然な動きを引き出すことができます。

そうすることによって、ケアを受ける側は自然な動きで負担が少なく動くことが出来ると同時に、自らの動きの資源に気付き、自らの動きの能力を最大限活用できるようになります。また、キネステティクスは接触を重要視しているため、ケアを受ける側は心地よい動きの感覚を感じることができます。ケアをする側にとっても無駄な力は必要とせず、力まかせに持ち上げたりすることが無くなるため、腰痛などの健康障害のリスクを軽減することにつながり、ケアを提供する側、ケアを受ける側双方にとって健康増進に役立ちます。そして、6つの視点(概念)を使って活動や動きを分析し、よりよい活動の方法を考え実践をしていくという経験をするため、ケア提供者自身がより適切なケアを提供する能力や動作や活動の分析能力をも高めていくことができます。

これらの概念は、体験を通して自らの動きの感覚からのみ、学習することができます。ですから、本を読んだり、見るだけでは理解することが出来ません。格闘技やスポーツなど、動きが伴うものは、本を読んだりDVDを見るだけでは上手くなる事が出来ないのは皆さん知っていると思います。本や映像が役に立つとしたら実際に経験をした上で、それらを読んだり見たりすることで更に理解を深めるということは誰でも知っていることです。

そして、上達するには何度も練習をして繰り返し反復するうちに徐々に上達していく。上達するにはある程度の時間と練習が必要だと言う事も一般的な理解だと思います。覚える、上達するには実際にその経験をした人にしか解からない事が多くあります。キネステティクスもこれと同じことが言えます。口で説明されたとしても、本を読んだとしても、DVDを見たとしても、体験する(自らが感じる)事がなければ、理解ができないし、伝わらないのです。理解したつもりになることと、本当に理解すると言うことは違います。

ですから、キネステティクスのセミナーは、体験が主となり、自らが動きながら自分自身で気付いていくという学習になります。通常の学習のように総論、各論を講義で教わり、頭で理解してからと言うのでは無く、動きの感覚から自らが気付いていくという学習のため、感じ方は十人十色とさまざまで、気付きもさまざまですが、キネステティクスではその自らの気付きをどう活用することが出来るのかと言うことを考えることができます。ですから、それぞれがそれぞれに必要だと感じる領域に活用することができるのです。

キネステティクストレーナーは皆さんに何かを教えるというのではなく、皆さんが自分自身で活動や動きに関する気付きを深めることができるように学習環境を整えるという事をします。また、キネステティクスの概念は、動きを言語化して分析する共通言語のツールとしても活用できるので障害の有無や看護・介護領域、自己や他者に関わらず、人間のすべての活動、動きについて理解を深めることができます。

キネステティクスは、「接触と動きはコミュニケーション」(自分を感じ、相手を感じ、お互いを感じ合う。)という基本的な考えの上の、「学習理論と実践」を自らが体験を通して気付いていくことから始まります。従来のありがちな相手を動かすのにはどうしたらよいかと言う、一方的な動かし方の学習ではなく、どうしたら相手が動けるのかと言う、一緒に動く方法を考えるためのツール(道具)になります。それがキネステティクスと言えます。

キネステティクスを実践すると、相手の表情や動きや関係性を今よりももっと感じることができるようになります。そして、『生きている』から『活きている』に人が本来の姿を取り戻すことが出来ます。

キネステティクスを知ったことで自らが『気付き』、自らが気付くことで自らの『視点』が変わり、自らの視点が変わる事で相手への『関わり方』が変わり、相手への関わり方が変わる事で、相手の姿が生きているから『活きている』に変わるのだと思います。

※上記の内容は、キネステティクスの説明と言うよりは、私がキネステティクスに出会い、学びを深めながら実際のケアの現場で実践しながら今日にいたった現在の感想です。

皆さん、是非、セミナーを体験することをお勧めします。

現在、創始者オリジナルのキネステティクスは、以下のコース別学習プログラムとして日本で提供されています。

キネステティクス®・紹介ミニコース

看護のキネステティクス®・ベーシックコース

看護のキネステティクス®・アドバンスコース

認定プラクティショナーコース

ベーシックコース教師養成コース

「看護の」という言葉は、看護職や看護の現場だけというのではなく、ケアというのには看護も介護も入ります。日本では看護・介護と別れていますが、介護は比較的新しい言葉であり、キネステティクスでは活動や動き、動きの感覚など人間の根源的なものを重要視しているため、元来の看護の意味(介護という言葉が生まれるずっと以前)の根源的なものとしての意味で、「看護の」という言葉を使用しているのだそうです。ですから、保健、医療、福祉、看護、リハビリ、介護、福祉用具関連の仕事に従事されている方、ご家族を介護されている方なと゛受講したい方はどなたでも自由に受講していただくことが可能です。しかし、ベーシックコースを修了せず、アドバンスコースを受講するということはできません。1つずつ段階を踏んで受講していくことが必要です。また、教師養成コースなどは受講要件があるのでご注意願います。

キネステティクス®・ベーシックコースは、日本国内でもキネステティクストレーナーの養成が開始され、日本人トレーナーによるセミナーが各地で開催されています。ベーシックコース以外のセミナー受講については下記のケアプログレスジャパン主催のセミナーでしか受講することができません。

紹介ミニコースは、キネステティクスの概念のうちの1つの概念を体験するというキネステティクスの紹介です。これも全国で開催されています。このコースに関しては修了証は発行されません。

詳細なコース内容をお知りになりたい方、
創始者が行うセミナーに参加されたい方は、
創始者オリジナルの教育プログラムセミナーを提供している
ケアプログレスジャパンの公式サイトでご確認ください。

CARE PROGRESS JAPAN   http://www.careprogress.co.jp

キネステティクス・トレーナーの運営しているサイトもご紹介します。
広島県・その近郊にお住まいの方は、是非、下記団体
主催のセミナーにもご参加ください。楽しくキネステティクスを学ぶ事ができます。                 
アイリーケアライフ公式サイト
IRIE CARE LIFE  http://www.iriecarelife.jp